突発性難聴

こんなお悩みはありませんか?

  • 朝起きたら片耳がほとんど聞こえなくなっていた
  • 耳が突然詰まったような感覚があり、音が遠く聞こえる
  • 耳鳴りが急に始まって、聞こえにくさも重なってきた
  • めまいや吐き気が出て、そのまま耳の聞こえも悪くなった
  • テレビや会話の声が片耳だけくぐもって聞こえる
  • 子供が「耳がおかしい」「耳がふさがっている感じ」と言い出した
  • 数日前から聞こえにくいが、様子をみていたら改善しない
  • 過労やストレスが続いていた時期に、急に耳が聞こえなくなった

突発性難聴は、発症から治療を開始するまでの時間が、その後の聴力回復に大きく関わるとされています。「そのうち治るだろう」と様子をみることが、回復の機会を狭めてしまうことがあります。上記のような症状に心当たりがある場合は、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診されることをおすすめします。

突発性難聴とは

突発性難聴とは、明らかな原因がないまま、ある日突然片方の耳の聴力が急激に低下する疾患です。「朝、目が覚めたら耳が聞こえなくなっていた」「電話中に突然片耳の音が消えた」という形で発症することが多く、多くの場合は片耳だけに起こります。

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の定義では、突発性難聴は「突然発症する原因不明の感音難聴」とされており、発症後できるだけ早期に治療を開始することが重要とされています。治療の開始が遅れるほど聴力の回復が難しくなるとされており、「時間との勝負」の側面がある疾患のひとつです。

突発性難聴の発症率は人口10万人あたり年間10〜20人程度とされており、決して珍しくない疾患です。30〜60歳代に多くみられますが、10代・20代のお子様や若い方にも起こることがあります。過労・睡眠不足・強いストレスが重なった時期に発症することが多いとされており、生活習慣も発症に関係している可能性があります。

当院では、「耳が急に聞こえなくなった」という訴えには優先的に対応できるよう努めています。聴力検査(オージオメトリー)と鼓膜観察を行い、突発性難聴の可能性がある場合は速やかに治療方針をご説明します。入院加療が必要と判断される場合には、連携する医療機関へのご紹介も行います。

突発性難聴の主な症状

突発性難聴の症状は、主に以下の4つです。これらが単独で、あるいは重なって現れることがあります。

突然の難聴(聴力低下)

最も特徴的な症状が、片耳の聴力が突然低下することです。「昨日まで普通に聞こえていたのに、今朝から片耳だけ聞こえない」という訴えが典型的です。両耳同時に起こることはほとんどなく、片側だけに発症します。聴力低下の程度は軽度から高度(ほぼ聞こえない状態)までさまざまで、低音域・高音域・全音域と影響を受ける音の帯域も異なります。

耳鳴り

難聴と同時に、または難聴よりも先に耳鳴りが始まることがあります。「ピー」「キーン」「ザー」など、さまざまな音として感じられることがあります。耳鳴りは難聴が改善されるにつれて軽くなることがありますが、難聴が残った場合に耳鳴りも続くことがあります。

耳の詰まり感・閉塞感

「耳に水が入ったような感じ」「耳が綿でふさがれているような感覚」「音がこもって聞こえる」という訴えもよく見られます。中耳炎に似た詰まり感のため、「耳掃除をすれば治るかも」と自己対処しようとするケースもありますが、突発性難聴による閉塞感は外耳の問題ではなく内耳の異常によるものです。耳掃除では改善しませんので、耳鼻咽喉科を受診されることをおすすめします。

めまい・吐き気

突発性難聴の患者様の一部では、難聴と同時に回転性のめまいや吐き気を伴うことがあります。めまいを伴う場合は伴わない場合と比べて、聴力の回復がやや難しくなるとされています。強いめまいが続く場合は、メニエール病や前庭神経炎との鑑別も必要になることがありますので、症状の詳細を医師にお伝えください。

突発性難聴の原因

「突発性」という名称が示す通り、突発性難聴の明確な原因は現時点では解明されていません。ただし、以下の要因が発症に関係している可能性があるとされています。

内耳の血流障害

内耳の有毛細胞(音を感じ取る細胞)は、非常に繊細で血流の影響を受けやすいとされています。内耳を養う血管が何らかの原因で急激に収縮したり、血流が滞ったりすることで、有毛細胞がダメージを受けて難聴が起こるという説が有力なもののひとつです。ストレス・過労・睡眠不足・喫煙・糖尿病などが血流に悪影響を与える要因として指摘されています。

ウイルス感染

ヘルペスウイルスやムンプスウイルス(おたふくかぜの原因ウイルス)などのウイルスが内耳に感染することで、聴力低下が起こるという説もあります。風邪をひいた直後や、感染症の流行時期に発症するケースがみられることがその根拠のひとつとされています。

過労・ストレス・睡眠不足

突発性難聴を発症した患者様の多くが、発症前に強いストレスや慢性的な疲労・睡眠不足を経験していたとお話しになります。ストレスは自律神経に影響を与え、内耳の血流調節を乱す可能性があるとされています。働き盛りの30〜50歳代に多い背景には、こうした生活習慣との関連が示唆されています。

子供の突発性難聴・お子様の聞こえの変化に気づいたら

突発性難聴は大人に多い疾患ですが、10代のお子様に発症することも珍しくありません。特に受験期・部活の大会前など、心身にストレスがかかりやすい時期に起こりやすいとされています。

お子様が「耳が変な感じ」「片方の耳から音が聞こえにくい」「テレビの音が片側だけ小さく聞こえる」と訴えた場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診されることをおすすめします。お子様は症状をうまく言語化できないことがあり、「なんとなく耳がおかしい」という訴えが軽視されてしまうことがありますが、突発性難聴の観点からも早期の聴力確認が重要です。

また、お子様の場合、滲出性中耳炎による聞こえにくさや、急性中耳炎の後遺症による一時的な難聴と混同されることもあります。こうした疾患と突発性難聴とでは対応が異なりますので、「突然聞こえにくくなった」と感じたら、自己判断せず専門医に診ていただくことが大切です。

おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)に伴う難聴(ムンプス難聴)は、突発性難聴の中でも特に重症化しやすいものとして知られています。ムンプス難聴は一側性の高度難聴になることが多く、回復が難しいとされています。おたふくかぜにかかった後や流行時期に耳の聞こえの変化があった場合は、すぐに受診してください。

突発性難聴の治療

突発性難聴の治療において最も重要なのは、「できるだけ早く治療を開始すること」です。発症から治療開始までの時間が短いほど、聴力が回復しやすいとされています。「数日様子をみてから」ではなく、気づいた日・気づいた翌日には耳鼻咽喉科を受診されることをおすすめします。

治療の効果には個人差があります。以下に示す治療内容はあくまで一般的な例です。

ステロイド療法

突発性難聴の治療の中心となるのが、ステロイド薬(副腎皮質ステロイド)の投与です。内耳の炎症を抑え、聴力の回復を助けることを目的として使用されます。内服による治療が基本ですが、糖尿病や高血圧など全身疾患をお持ちの方には、耳の後ろの骨(乳様突起部)からステロイドを直接注射する「鼓室内ステロイド注射」を選択することもあります。

ステロイド薬は副作用(血糖値の上昇・胃腸への影響・免疫機能の低下など)が生じることがあるため、使用にあたっては医師の判断のもと慎重に行います。

内耳循環改善薬・ビタミン剤

内耳の血流を改善することを目的とした薬剤(血管拡張薬・内耳循環改善薬)や、神経の回復をサポートするビタミンB12製剤などが、ステロイド療法と組み合わせて使用されることがあります。

入院加療

症状が重篤な場合、糖尿病などでステロイドの内服が難しい場合、あるいは点滴による集中的な治療が必要と判断される場合は、入院加療が適切なことがあります。当院では入院設備を持っていませんが、連携する医療機関への紹介状を速やかに作成し、入院治療につなぐサポートを行います。

安静・生活上の注意

治療中は以下の点に気をつけていただくことが大切です。

  • 十分な睡眠をとり、過労を避ける
  • 精神的なストレスをできる限り軽減する
  • 喫煙は内耳の血流を悪化させる可能性があるため、禁煙が望ましい
  • アルコールの過剰摂取を控える
  • 処方された薬は自己判断で中止せず、最後まで服用する

治療開始後も定期的に聴力検査を行い、回復の経過を確認しながら治療方針を見直していきます。「少し良くなった気がするから大丈夫」と自己判断せず、必ず経過観察の受診を続けていただくことが大切です。

よくあるご質問

耳鼻咽喉科を受診されることをおすすめします。突発性難聴の診断には、純音聴力検査(オージオメトリー)による聴力の評価と、鼓膜や外耳道の状態確認が欠かせません。内科や総合病院の救急外来では必ずしも聴力検査ができる環境が整っていないことがあります。「急に耳が聞こえなくなった」と感じたら、できるだけ早く耳鼻咽喉科へご相談ください。夜間や休日で受診が難しい場合も、翌朝一番での受診をおすすめします。
症状だけで自己判断するのは難しく、耳鼻咽喉科での診察が必要です。ただし、急性中耳炎は耳の痛みや発熱を伴うことが多く、風邪の後に起こりやすい点が特徴です。一方、突発性難聴は痛みや発熱がなく、突然・急激に聞こえが悪くなることが多い点が異なります。滲出性中耳炎も痛みがなく聞こえにくさが出るため、突発性難聴と混同されることがありますが、鼓膜の観察や聴力検査で鑑別できます。「急に聞こえにくくなった」と感じたら、まず耳鼻咽喉科を受診されることをおすすめします。
突発性難聴の聴力回復は、治療開始のタイミングが非常に重要とされています。発症から1週間以内、できれば数日以内に治療を開始した場合に回復しやすいとされており、2週間以上経過してからの治療では回復が難しくなることがあります。ただし、回復の程度には個人差があり、完全に元通りになる方もいれば、部分的な回復にとどまることもあります。「しばらく様子をみよう」という判断が回復の機会を狭めてしまうことがありますので、気づいたら早めの受診を強くおすすめします。
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